事件概要

2019年5月8日午前10時15分ごろ、滋賀県大津市大萱の交差点で、右折しようとした乗用車と直進車が衝突。はずみで右折車が歩道に乗り上げ、信号待ちをしていた散歩中の保育園児の列に突っ込んだ。当時2歳の園児2人が死亡、引率の保育士や園児ら計15人が重軽傷を負う痛ましい事故となった。

右折車を運転していたのはS.S被告(当時52歳の女性、保育士)、直進車を運転していたのはS.A被告(当時62歳の女性)。検察は2人を過失運転致死傷罪で起訴した。事故直後、悲しみに暮れる保育園長らの記者会見が連日報じられ、社会に大きな衝撃を与えた。

判決

■ 右折車のS.S被告

・判決日:2020年2月17日

・裁判所:大津地方裁判所 / 裁判長:大西直樹

・判決:右折車:禁錮4年6月(求刑:禁錮5年6月)/直進車:禁錮3年・執行猶予5年(求刑:禁錮5年)

判決理由では、右折時の安全確認義務違反が認定され、結果が極めて重大であるとして実刑判決となった。

■ 直進車のS.A被告

・判決日:2020年2月17日(同日)

・裁判所:大津地方裁判所

・判決:禁錮3年執行猶予5年(求刑:禁錮5年)

判決理由では、直進車側にも前方注視義務違反があるとされた一方、右折車の優先妨害が事故の主因とされ、執行猶予がついた。

被害者の声

亡くなったのはレイモンド淡海保育園の散歩中だった園児2人(当時2歳)。引率の保育士、ほかの園児ら計15人が重軽傷を負った。事故後、保育園関係者の記者会見では『私たちは見守るのが精一杯だった』との悲痛な訴えがあり、報道する側のあり方も問われた。

量刑の相場

過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法第5条)の法定刑は『7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金』。

量刑判断の要素は、死傷者の数、過失の程度、悪質要素(信号無視・酒気帯び等)の有無、遺族への被害弁償、被告の反省などとされる。

死亡2名・多数の負傷を伴う過失運転致死傷では、過去の判例では禁錮3年から7年の幅に判決が分布する傾向がある。本件は被害結果の重大さに対し、悪質要素(酒気帯び・信号無視等)はなかった点が、量刑判断上の難しさとなった。

同種事件の判決

2019年、東京都豊島区の池袋暴走事故では、当時87歳の元院長に禁錮5年の判決(2021年9月東京地裁)。

諸外国の事例

・アメリカ(カリフォルニア州):重過失による死亡事故(vehicular manslaughter)は最大10年の禁錮。複数死亡や悪質要素があれば加重。

・イギリス:危険運転致死罪(causing death by dangerous driving)は2022年法改正で最高刑が終身刑に引き上げ。

・ドイツ:刑法第222条『過失致死罪』と道路交通法違反の併合で、最高5年の自由刑。

・フランス:過失致死罪は最高3年の禁錮、加重事由ありで5〜10年。

(引用元:Department of Justice各国資料、Sentencing Council UK等を参照)

日本の禁錮4年6月は、英米基準では『軽い』、独仏基準では『相応』とも評価され得る水準である。

併科措置に関する論点

交通犯罪では、運転免許の取消・再取得制限、被害者参加制度の拡充、民事賠償の確実な履行、被害者支援制度の活用、ドライブレコーダーの普及などが議論される。本件後、信号交差点の安全対策(ガードレール設置等)も全国で進められた。

参考リンク

・NHK NEWS WEB『大津園児死傷事故 右折運転手に禁錮4年6月』(2020年2月17日)

・朝日新聞デジタル『大津の園児死傷事故、右折運転手に禁錮4年6月』(2020年2月)

・毎日新聞 大津園児死傷事故 一連の報道(2019〜2020年)

・京都新聞 大津園児事故関連報道

・レイモンド淡海保育園 記者会見資料

法改正動向

本件を契機に、各自治体で『キッズゾーン』(保育施設周辺の交通安全対策強化区域)の指定が進んだ。歩道のガードレール設置、交差点の構造改善も全国で広がっている。