最新のトピック

その他の犯罪死刑制度

「死刑より残酷」か「死刑の代わり」か——仮釈放のない"終身刑"を、日本は入れるべきか

終身刑の導入は是か非か|仮釈放のない刑と死刑・無期懲役の違い・評判

2026年6月13日

日本にはまだ「仮釈放のない終身刑」がない。死刑のすぐ下にあるのは出られる可能性を残した無期懲役だ。日弁連の提言や世論調査をもとに、終身刑を導入すべきかの論点と評判を見ていく。

📌 1分でわかる概要 日本で死刑のすぐ下にある刑は無期懲役で、これは仮釈放(出られる可能性)が残っている。一方、**仮釈放のない「終身刑」**は日本に存在しない。日弁連は2022年、死刑を廃止して終身刑に置き換える提言を出し、「死刑か終身刑か」の議論が改めて熱を帯びた。世論調査では「終身刑を入れるなら死刑を廃止してよいか」に対し、廃止しない61.8%/廃止する37.5%。導入論の中身と、その評判を見ていく。

「無期懲役」と聞くと、一生刑務所から出られないと思っている人は少なくありません。でも実際は違います。まずそこから整理しないと、「終身刑を入れるべきか」は考えられません。

💡 終身刑・無期懲役・死刑はどう違う?

刑の種類出られる可能性日本に在るか
死刑なし(生命を奪う)あり
終身刑(仮釈放のない無期刑)原則なし(死ぬまで収容)なし
無期懲役(現行)あり(10年経過で仮釈放を考慮しうる)あり
有期刑あり(上限20年・併合30年)あり

💡 用語解説:「終身刑」とは 仮釈放(出所のチャンス)を認めない無期の刑のこと。「絶対的終身刑」とも呼ばれます。日本の無期懲役は仮釈放の余地を残すため、これとは別物。「終身刑を作る」とは、出られる見込みのない刑を新しく設けるという意味です。

🔍 日本の現状——「無期」でも実際に出られるのか

制度上は仮釈放がありますが、実態はかなり厳しい運用です。

  • 無期刑で仮釈放になった人は、2005〜2014年の10年間で合計73人
  • 2014年に仮釈放された人の平均在所期間は約31年(31年4か月)
  • 仮釈放を考慮しうる最短は刑法上10年だが、実際にはるかに長い。

つまり、いまの無期懲役も「すぐ出られる」刑ではなく、実際に出られる人はごく少数で、出るとしても30年以上が普通です。「無期は甘い」という印象と、現実の運用にはギャップがあります。これが、終身刑をめぐる議論の出発点です。

✍️ 日弁連の提言(2022年)——死刑を終身刑に「置き換える」案

日本弁護士連合会は2022年11月、死刑制度の廃止とセットで、代わりの刑として**終身刑(終身拘禁刑)**の創設を提言しました。

💡 提言の中身 ・殺人・強盗殺人など、いまの死刑にあたる罪をすべて終身刑に置き換える。 ・ただし刑の確定から15年〜20年たてば、地方裁判所に**「特別減刑」を申し立てられる**仕組みをセットにする。 ・減刑が認められれば、仮釈放のある無期刑として扱う(=完全な”出口なし”にはしない)。

「死刑をなくす代わりに、終身刑で社会から隔離する。でも誤判の救済や更生の余地は残す」——これが提言のねらいです。一方で「死刑を残したまま終身刑だけを足す」という、別の方向の議論もあります。

📊 評判・世論——導入したら死刑は廃止すべき?

内閣府の世論調査(令和6年=2024年10月)では、「仮釈放のない終身刑が新たに導入されるなら、死刑は廃止してよいか」が問われました。

  • 死刑を廃止しない……61.8%
  • 死刑を廃止してよい……37.5%

終身刑という選択肢を示しても、なお死刑存置の支持が多数でした。ただし「廃止してよい」も4割近くあり、終身刑があれば死刑をやめてよいと考える層は決して小さくないことも分かります。

🌍 海外はどうなっている?

仮釈放のない終身刑が「ある」アメリカ、イギリス、オランダ、中国 など
無期でも仮釈放の余地を残すドイツ(15年)、フランス(18年)、韓国(25年)など多数

法務省は「仮釈放のない無期刑を採る国は比較的少数」と説明しています。ヨーロッパでは「出口のない刑は人間の尊厳に反する」として、絶対的終身刑に慎重・否定的な流れもあります。世界的に見ると、終身刑の扱いは国によって大きく割れています。

⚖️ 賛成・反対、それぞれの言い分

【導入に前向きな立場】 ・死刑をなくす(減らす)ための受け皿になる。 ・誤判だったとき、生きていれば救済できる。 ・「無期は出てくる」という不安に対し、確実に隔離できる。

【慎重・反対の立場】 ・出口のない刑は**「死刑より残酷」との指摘がある。 ・更生の希望が断たれ、改善意欲・刑務所の秩序に影響しうる。 ・死刑を残したまま足すと、結局厳罰化が進むだけ**になりうる。

つまり 日本に「仮釈放のない終身刑」はまだない。日弁連は死刑の代わりに終身刑(+特別減刑)を提案したが、世論は「終身刑があっても死刑は残す」が多数だ。終身刑は死刑を減らす切り札にも、死刑より残酷な刑にもなりうる——どちらの顔を重く見るかで、評価は正反対に分かれる。

💬 みんなで考えたいこと

死刑との関係:終身刑を入れるなら、死刑はなくしてよいでしょうか。それとも両方あるべきでしょうか。 ・“出口”の有無:一生出られない刑は、死刑より重いと感じますか、軽いと感じますか。 ・更生と隔離:更生の希望を残すことと、社会を確実に守ること。どちらを優先すべきでしょうか。


本記事は公開資料・各社報道をもとに、教育・議論のために論点を整理したものです。出典:内閣府「基本的法制度に関する世論調査」(令和6年10月)、日本弁護士連合会「死刑制度の廃止に伴う代替刑の制度設計に関する提言」(2022年11月)、法務省資料、各社報道。

📌 この問題に関連する改正案

国民からの改正案

終身刑の創設

死刑と無期拘禁刑の中間刑として、仮釈放のない終身刑を新設する案

この改正案に賛否を投じる →
刑罰の採否

死刑制度の存廃

終身刑を導入するなら、死刑を維持するのか廃止するのかを考える論点

この改正案に賛否を投じる →
改正案ウォッチ

再審制度の見直し

誤判があった場合に、救済をどう速く確実にするかという視点

この改正案に賛否を投じる →

💬 このトピックについてのコメント

並び順:
0 / 500

読み込み中…

参加する