事件概要
T.S被告(仮)は、当時の妻と婚姻関係にあった期間中、その連れ子である養女に対し、養女が13歳から15歳ごろまでの間、繰り返し性的虐待を行ったとして、監護者性交等罪、児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの罪に問われた。
報道によると、被告は養女への性的行為の様子をスマートフォンで撮影し、画像データを保存していたとされる。事件は、母親が養女のスマートフォンを確認したときに、被害の事実をはじめて知ったことで発覚したと報道された。
家庭という閉ざされた空間で長期間にわたって続いた虐待で、被害発覚までに時間がかかったことから、子どもへの性的搾取をどう早く見つけて通報につなげるかが、改めて社会の課題として議論された。
判決
2025年12月24日、福島地方裁判所会津若松支部は、監護者性交等罪などに問われたT.S被告(50歳)に対し、懲役10年(求刑:懲役12年)を言い渡した。
判決理由では、被害者が13歳から15歳の間に被害を受けたとされる点、長年かつ常習的に性交に及んだ点が重く見られ、「醜悪かつ卑劣」と厳しく指摘されたと報じられている。
被害者の声
被害者は当時13歳から15歳ごろの養女。報道によれば、事件は母親が通信アプリの履歴を確認したことをきっかけに発覚した。被害者の母親は「性犯罪は心の殺人」と述べ、事件発覚後も家族の時間が止まっていると訴えた。
母親は、自身も過去に性的虐待を受けた経験があったことに触れ、被害を打ち明けた子どもに寄り添う言葉かけの重要性を語っている。出所後に被害者や家族が再び危険にさらされない仕組み、性犯罪の厳罰化も求めた。
量刑の相場
監護者性交等罪(刑法第179条第2項)の法定刑は、「5年以上の有期懲役」(不同意性交等罪と同じ重さ)である。2017年の刑法改正で新設された罪で、18歳未満の子どもに対し、現に世話をする立場の影響力を使って性交などを行った者を処罰する。
児童買春・児童ポルノ禁止法第7条(製造)の法定刑は、「3年以下の懲役、または300万円以下の罰金」(自分の性的好奇心を満たすための製造)。被害児童に姿態をとらせるなど積極的に関わった場合は、別の規定がある。
量刑を決める際に裁判所が見るのは、被害期間の長さ、行為の回数や態様、画像データを作ったり流出させたりしたか、加害者の立場(監護者・実親・継親など)、子どもへの心理的な支配の程度、反省や示談、再犯リスクなどとされる。
監護者性交等罪と児童ポルノ製造罪が一緒に問われる事件では、懲役7年から15年の幅に判決が分布する傾向があるといわれる。
同種事件の判決
類似の事件として、実の父親による娘への監護者性交等事件で、被害期間の長さや回数の多さを理由に、懲役10年を超える判決が複数報告されている。
諸外国の事例
・アメリカ:近親相姦罪に加え、児童性的虐待として州・連邦法で処罰される。連邦法上の児童ポルノ製造は、最低15年から最高30年の禁錮。
・イギリス:Sexual Offences Act 2003 第25条「家族構成員による児童性的虐待」は最高14年の禁錮。児童ポルノ製造は最高10年。
・ドイツ:刑法第174条(被保護者に対する性的虐待)は5年以下の自由刑、加重事由ありで10年以下。第184b条「児童ポルノ」は最高15年。
・フランス:刑法第222-31-1条「親族による性的暴行」は禁錮20年。
・スウェーデン:2018年と2022年の性犯罪法改正で、児童への性的虐待への処罰を強化。
日本の刑の下限(懲役5年以上)が、欧米と比べて軽いのか重いのか、議論が続いている。
併科措置に関する論点
家庭内での性的虐待事件では、刑罰に加え、加害者と被害者を物理的に引き離すこと、接近禁止命令、性犯罪者処遇プログラムの強制受講、性犯罪者登録制度をつくる必要があるか、といった点が議論されている。日本では現在、性犯罪者登録制度はまだ導入されていない。
法改正動向
2017年の刑法改正で、監護者性交等罪と監護者わいせつ罪が新設された。2023年の改正では「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」に整理され、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられた。被害児童を守る観点から、性犯罪者の再犯防止策(性犯罪者登録制度や居住地の登録など)の導入も議論が続いている。
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