事件概要

2019年1月24日、千葉県野田市の自宅で、当時10歳のM.K被害者が浴室で死亡しているのが発見された。父のY.K被告(当時41歳)が、長期にわたり暴行と寒い浴室での虐待を加え、被害児童を死亡させたとして起訴された。母のN.K被告も傷害幇助罪に問われた。

被害児童は前年(2018年)、学校のいじめアンケートで『お父さんにぼう力を受けています。先生、どうにかできませんか』と訴えていた。しかし、野田市教育委員会が被告の威圧を受け、アンケートのコピーを父親本人に渡すという信じがたい対応をしたことが後に判明する。沖縄県糸満市から千葉県野田市に転居する際の児童相談所間の情報引き継ぎも不十分だったとされる。

被害児童の必死のSOSが大人たちに届かなかったという事実が、社会に強烈な衝撃を与えた。

判決

・判決日:2020年3月19日

・裁判所:千葉地方裁判所(裁判員裁判) / 裁判長:中泉徳和

・判決:懲役16年(求刑:懲役18年)

・罪名:傷害致死罪、強要罪、強制性交等罪、児童虐待防止法違反

判決理由では、長期間にわたる執拗な暴行と、被害児童への性的虐待を含む極めて悪質な犯行と認定された。なお、母のN.K被告には2019年6月、千葉地裁で懲役2年6か月執行猶予5年の判決が出ている(傷害幇助罪等)。

被害者の声

被害者はM.K被害者(10歳)。沖縄から千葉県野田市に転居した小学4年生だった。学校アンケートでのSOSが象徴的事件として、児童虐待防止法・児童福祉法の改正(2019年6月成立)を後押しした。

量刑の相場

傷害致死罪(刑法第205条)の法定刑は『3年以上の有期懲役』。児童虐待死事件では、暴行の悪質さ、被害期間、被害児童の年齢、加害者の立場(実親・継親)、反省の有無などが量刑判断の主な要素となる。

実親による児童虐待死事件の量刑相場は、懲役10年から18年の幅で判決が分布する傾向があるとされる。本件は性的虐待を含む点、長期間の組織的な虐待である点で、相場の上限近くの判決となった。

同種事件の判決

2019年、東京都目黒区の目黒女児虐待死事件では、継父に傷害致死罪等で懲役13年(2019年10月東京地裁)。

諸外国の事例

・アメリカ:児童虐待死(child abuse murder)は州により異なるが、多くの州で一級殺人(first-degree murder)として死刑または終身刑が選択肢になる。

・イギリス:Domestic Violence, Crime and Victims Act 2004の『causing or allowing the death of a child』罪は最高14年の禁錮。murderとして起訴される場合は終身刑

・ドイツ:刑法第225条『被保護者虐待罪』は最高10年の自由刑。死亡結果があれば過失致死等と併合。

・フランス:刑法第222-7条『暴行による死亡を招いた行為』は最高15年、未成年に対する場合は20年。

・北欧:児童虐待事件では施設保護と心理治療を重視するが、加害者には長期実刑が言い渡される傾向。

(引用元:Department of Justice各国法務省ウェブサイト、Council of Europe資料等を参照)

日本の懲役16年は、欧米基準と比較してどう評価されるか、議論が分かれる。

併科措置に関する論点

児童虐待事件では、親権の喪失・停止審判、接近禁止命令、加害者更生プログラム、児童相談所と警察の情報共有義務の強化、DV被害者となった親への支援拡充などが論点になる。

参考リンク

・NHK NEWS WEB『野田 小4女児虐待死 父親に懲役16年判決』(2020年3月19日)

・朝日新聞デジタル『野田の心愛さん虐待死 父親に懲役16年』(2020年3月)

・毎日新聞 野田児童虐待死事件 一連の報道(2019年〜2020年)

・千葉日報 野田児童虐待死事件 報道

・厚生労働省『児童虐待による死亡事例等の検証結果(第15次〜第17次報告)』

法改正動向

本件と目黒事件を契機に、2019年6月、改正児童虐待防止法・改正児童福祉法が成立(2020年4月施行)。親権者による体罰禁止の明文化、児童相談所の体制強化、警察との情報共有義務化が盛り込まれた。